絵画の「対話鑑賞」は、推理小説を読むような謎解き体験が魅力(8回目)。【滋賀県立美術館】

posted:2025-06-03 | community_auther | ブログ
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またまた、県美の対話鑑賞へ行ってきました。

今日も、滋賀県美の「対話鑑賞」行ってきました。
4月に初めて伺ってから、2ヶ月間ほぼ毎週末、今回で8回目の参加です。

「対話鑑賞」は、開始直前に美術館に来られているお客さんに呼びかけてお誘いをして参加者が集まるシステム。
毎回5人くらいの参加者があって、集まらない場合は美術館の学芸員の方が入って「対話鑑賞」が行われます。
今日は、開始時間に私一人だけ。
いつもお見かけする学芸員の女性が参加することになり、さらに直前に美術館リピーターと思われる女性が参加して、計3人で始まりました。

本日のお題の絵は、女性たちを描いた日本画。

今日のお題は、滋賀県立美術館がたくさん所蔵されている地元の作家・日本画家小倉遊亀(おぐらゆき)の作品。
名前は忘れてしまいましたが、絵の構成は上記のようなもの。

少女から大人の女性が5人、座敷のような場所に座っていて、
目立つ女の子は綺麗な服を着ていて、編み物をしている。
その他は、少し年上の女の子が編み物を見ていて、
その後ろに手ぬぐいを頭に巻いた大人と思われる3人の女性がいる。
こんな状況。

一見たわいのない生活の一場面…これどう読み解きますか?^^

対話鑑賞始まり。

いつものように、まず、この絵をじっくり見る。
今日も私は、この時間ではほとんど何も見つけられない。

続いて、参加者がそれぞれの感じたことを話す。

出された意見は…
・女性たちの顔、目が細くきつい?
・顔が似ている。
・背景が一色で屋内なのか?屋外なのかわからない。
・三人の女性が、幼い女の子の編み物を見ている。
・編み物のかぎ針が現代ぽくて、転がっている毛糸玉が浮いている?よう。
・無造作に置かれたお皿が気になり、たくあん、レンコンなどが見えるが箸がない。
・特に嘘路の3人が、とってつけたようでちょっと不自然?(でもまあ様式美…という気はする。)
など。

ここで、後ろの女性たちが頭に巻いている手ぬぐいに注目することに。
手ぬぐいをはだけている女性が二人いて、作業の休憩のようにも見える…と。
そう言えば、一人はキセルを吸っていて確かに休憩ぽい。

すると誰かが、女性たちの年齢差を気にして、これが家族のように見える…という意見を。
左の女性は幼い子の母で?、手前右の女性は少し若く女の子のお姉さん?その他は親戚の大人の女性では?という。

それを聞くと、このグループが親戚のように見え、昔の(昭和初期くらい?)暮らしを想像して、親戚で隣り合わせに住み一緒に農業などを営んでいるのでは?という設定が見えてきた。
さらに、男の姿がないのもたまたまではなくて、女性だけで行う農作業のようなことをしているのでは?となり、例えばお茶の栽培(お茶摘み)なのでは?という意見に(確かに頭の手ぬぐいがその雰囲気)。

ここまで来ると、もう、上記のような大設定が揺るぎなくなってしまう。
すると、細かい部分が見え始める。

手前の二人の女の子が、柄の美しい着物を着ているのに対して、後ろの女性たちは地味な着物で、作業に適している?と思われる。
その大人の女性たちは細い帯を締めているのに対し、前の二人の子供?たちは太い帯をして作業に適していないよう。

しかし、昔のこのような農作業をしている一族にしては、子供の着物が豪華?で、大人たちも前掛けに細かい文様が織り込まれて、経済的に悪くない家族のようにも見える。
これらに気づくと、この衣装や地域・時代を調べると、どんなことを営んでいたのか?などわかるのではないか?という気がして来る。

さらに深読みできるこの絵の全体像。

参加した3人が交互に上記のような意見を出し合って、想像なりに、絵の内容がだんだんわかってきた。
細かいことを積み重ねていくことで、この絵の全体像を想像できる気がして来る。

実は、この辺りで「対話鑑賞」は終わってしまったのですが、
私はまだ、頭の中で思考が続いていました。

意見の中で誰かが、大人の女性たちが二人とも着物の中に手を入れているのが気になる…と言っていた。
これを思い出すと、絵を描くときにこういう記憶が強く残っていたのでは?と感じた。
すると、これは子供が幼いときに見た光景の断片で記憶に残っているもののようにも思える。
こういったへんなことが記憶に残っていたりする…。

そうか、この子供は作者自身の位置にあるのでは?と読みが進んだ。
この絵は、作者が子供の頃によく生活していた一場面で、子供の頃の記憶があちこちに貼り付けられているのかも?…と。
私が考えたのはここまで。

「対話鑑賞」が終わってから、この日のファシテーターさんに、少しこの絵の解釈をたづねてみると…
私の個人的な知識や読みですが…といって、以下のようなことを教えてくれた。
・この作者の出身は、滋賀県の田上地区。
・そこでは、米やお茶を作っていた。
・その地域の農家はわりと裕福であった。
・布も自製していて、頭のてぬぐいの柄はその家独自の文様だった。
など。
なるほど、まんざら遠くない話をしていいたのかも。。。

推理小説をよむような絵画の謎解き体験。

これが、今日の「対話鑑賞」の概略です。
いつもにも増して、読み解きが進んだ回となりました。
こんな風に、絵画を見て読み解くという作業は、一人で美術館を回っていても到底できなかったと思います。
参加者で、気づいたことを出し合って、つぎつぎ謎を解いていくような作業は、
ミステリーの謎解きを実際に体験しているようで、とても面白くて貴重だと思いました。

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対話鑑賞の概要は…
・開催日 毎週 土、日曜日(休館日を除く)
・時間 1回目 11:00〜11:30
    2回目 13:00〜13:30
・集合場所 展示室1、2前
・定員 各回10名程度(先着)
・対象 どなたでも
・内容 展示室1または2に展示されている作品の中の一作品を、対話をしながら鑑賞します。
※ファシリテーターが選んだ作品で対話鑑賞をします。鑑賞する作品は、当日美術館エントランスでお知らせいたします。(1回目と2回目で違う作品を対話鑑賞する場合があります)
※時間の変更やプログラム中止の場合があります。美術館ホームページの「お知らせ」をご確認ください。

詳しくはリンク先を見てください。

・滋賀県立美術館の「対話鑑賞」
https://www.shigamuseum.jp/learn/vts/

 
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